談志死去

 独演会を観に行ったのは3年前だったなあ。
 その時の感想を少し修正して再掲。




立川談志独演会@仙台電力ホール(2008年6月13日)

 「談志もいつ死ぬか分からないし、死ぬ前に一度見ておいたら?」という妻の勧めによりチケットをとりました。(妻自身は仕事で行けない)

 会場に行ったら張り紙が。「立川談志 体調不良の為」公演内容が変更。独演会ではなくなってしまいました。

<公演内容>

1.立川談志 ご挨拶

2.立川談修 「黄金の大黒」

3.立川談笑 「金明竹

  中入り

4.松元ヒロ パントマイム

5.立川談志 「権兵衛狸」

 最初に「ご挨拶」で談志がマイクを持って登場。しかし話し出すと声がガラガラ、ヒーヒーのかすれ声。「白板症」だけど「がんがあることもあるから、この際ちゃんと検査しようと思って」病院に行ったら、「あなたよくこの体で九州に行って仕事してましたね」と医者に言われ、入院になったとのこと。「血糖値が500もあって」「病院から外出許可をもらって、今日来ました」と言ってました。落語の時も、「足がむくんで感覚がないんだ」と言ってました。実際、客の女性が花束を渡そうとステージの前まで行ったのに、談志はそこまで歩いて行けない。ちょっと痛々しいものがありました。

 帰ってからネットで調べると、談志は6月4日頃から入院していたらしい。「糖尿は、昨夜ビール飲まなかったら、血糖値落ちたけど、明日は肝臓の検査、これが危ねぇらしい。」(6月4日、野末陳平に)なんて言葉もあり、「死ぬ前に見ておく」というのがこんなに真実味を帯びてくるとは。

 ともかく、落語の中身。

 談修、談笑は全然知りませんでしたが、さすがこういう時に代役を任されるだけのことはあります。談志を聴けなくて客ががっかりしている空気の中で出てきて落語をやるというのはプレッシャーがあると思いますが(談修いわく「完全アウェイ」)、よくぞあれだけ笑わせてくれました。

 談修は古典を端正に。談笑は破天荒に。談笑の「金明竹」は面白かったですよ。後半に出てくる使者の言葉が、本当は関西弁でべらべら喋って、聞いてるほうが意味が分からない、というネタですが、談笑はそれを東北弁(?)でやりました。それがまた、ほんとになんて言ってるか分からない、見事な方言。会場は爆笑の渦でした。いや、面白かった。

 松元ヒロのパントマイムは、しゃべくりながらやるパントマイム。ネタがアブナイのでテレビからは絶対呼ばれない、という。でもそこが談志に気に入られているとのこと。「普段は皇室ものもやるんですけど」という言葉に客席から拍手が起こり、予定を変更してネタを披露。いつもやっているという、「今日のニュースを読んでもらいながらその内容をパントマイムで表現する」というネタでも、会場爆笑でした。

 肝心の談志ですが、最初の「ご挨拶」ではちょっと挨拶して引っ込むのかと思ったら、「一言ジョークを2、3やります」と言って、それからジョーク集のオンパレード。2、3どころではなく、2、30個はやったのではないでしょうか。談志、やる気は満々だ。

 こんなジョークを大量に↓。

 「医者が、患者の妻に、『奥さん、旦那さんはね、精神的にとても疲れた状態です。それでね、精神安定剤を出しておきましたからね。・・・奥さんが飲んでください』」

 「権兵衛狸」でも、オチを言った後、拍手をわざわざ止めて、ジョークを更に2、3個言って、去っていきました。自分が休んだ分、客にできるだけ楽しんでもらおうという気持ちだったのかもしれません。落語も楽しみましたが、あれだけのかすれ声では、普段の談志の何割を味わうことができたのか、よく分かりません。
 ただ、何かオーラがあるという感じではありました。

 でも、この会では、私の知らないところにも面白い人はまだまだいるんだなあということを実感しました。

 「死ぬ前に談志を一回見ておく」だけでなく、思わぬ拾い物をした会でした。