ギトリスのコンサート

 92歳のギトリスを聴きに多賀城まで行ってきました。
 1曲目のモーツァルトソナタの冒頭ワンフレーズを聴いただけで、涙が出そうになってしまった。

 19世紀的、というのもよく分かるし、ホロヴィッツみたい、というのもよく分かる。フレーズを崩して「語る」という点では、昔聴いたヨーヨー・マみたいでもある。

 それにしてもフレーズを崩しまくっているので、ピアニストは合わせるのが大変そう。

 いかにも92歳という音で、力強さはない。CDとかテレビ放送とかで聴いたら、テクニックのアラだけが目立ってしまいそう。これは生でしか体験できない体験かもしれない。

 舞台に出る時もピアニストに抱えられるようにして出てきて、椅子に座って演奏する。よく飛行機に乗れたなあ。

 素晴らしい演奏会でした。
 この演奏を、聴く前と聴いた後とでは、人生が違ってしまう。そんな種類の音楽でした。

イヴリー・ギトリス ヴァイオリンリサイタル
(4月26日多賀城市文化センター大ホール、ピアノ:ヴァハン・マルディロシアン)

(曲目)
1 モーツァルト ヴァイオリン・ソナタ ホ短調 K.304
2 ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」

3 モーツァルト 幻想曲 ハ短調 K.475(ピアノ独奏)
4 小品集(その場で曲目を決めていた)
 ブラームス ヴァイオリン・ソナタ第3番 Op.108より(第3楽章?)
 パラディス シチリアーノ
 クライスラー シンコペーション
 ブラームス F.A.E.ソナタより スケルツォ
 マスネ タイスの瞑想曲
 クライスラー 美しいロスマリン

(アンコール)
 成田為三 浜辺の歌(ギトリスによる変奏?)
 クライスラー 愛の悲しみ