アファナシエフのコンサート

 アファナシエフ宮城県(それも仙台ではなく中新田)まで来てピアノを弾いてくれるということで、聴きに行きました。

 いや、強烈な演奏でした。まるで何かにケンカを売っているよう。聴いていると、強烈なパンチを受けているような気がしてくる。(全部褒め言葉です。)
 強いタッチ、音色にも決然とした意志と主張を感じる。

 プログラムに載っている本人のエッセイにも、「ベートーヴェンの仇を打つ、という衝動を抑えられる人がいるでしょうか?」と書いてあって、そうか、この人はベートーヴェンの仇を討つつもりでこういう演奏をしているんだと思いました。

 アンコールはショパン(多分マズルカ45番OP67-4かな?)。ベートーヴェンとは違って、ショパンの音楽は内向的なので、ベートーヴェンの時の攻撃性は影をひそめていましたが、その分、心揺さぶられる演奏でした。


 ちなみにチケットは3500円。前日の東京のコンサートは11000円なので、破格の安さ。これで利益が出るのか心配になりますが、「文化庁文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業の補助事業」ということなので、その補助金で収支が合うのかもしれません。

ヴァレリー・アファナシエフ ピアノリサイタル
(2016年10月30日、中新田バッハホール)

ベートーヴェン
 ピアノソナタ第8番「悲愴」
 ピアノソナタ第14番「月光」
 ピアノソナタ第23番「熱情」
(アンコール 多分ショパン マズルカ第45番Op67-4)


*プログラムには「悲愴・月光・熱情」のCDのライナーノートから転載されたアファナシエフの文章が掲載されていて、その中に次のような文章があります。これを読むと、僕の感じ方も間違っていないかなという気がしてきます。

(前略)世界中、そして不死に対しても、芸術は抵抗しています。愚かさに対する抗い、本能に振り回されることに対する抗い、愚劣なやから、そしてサクセス・ストーリーに対しても抗っています。ベートーヴェンの仇を打つ、という衝動を抑えられる人がいるでしょうか?

『熱情ソナタ』は<冷酷な楽曲>です。超人的とか人間を超えている、といった表現では十分ではありません。この曲を聴くと、<頭をガツンと打たれた>感じがします。でも、<衝撃は実のところ、もっと強い>のです。